映画『恋する寄生虫』 NEWS

2021.10.29
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10/28(木)スペシャルトーク付き試写会 イベントレポート

【10/28(木)スペシャルトーク付き試写会 イベントレポート】

井浦新「主演の2人が本当にすばらしい!」出演映画への溢れ出る愛を熱弁!

柿本ケンサク監督も自身の映像制作のこだわりを明かす

映画「恋する寄生虫」の試写会が10月28日(木)、東京・飯田橋の神楽座で開催され、上映後には柿本ケンサク監督と、主人公・高坂(林遣都)に近づく謎の男・和泉を演じた井浦新によるトークセッションが行われました。トークでは観客との質疑応答も行なわれ、監督の本作にかけた情熱や音楽や照明などに対する思いが語られました。

 

 

 

▼イベントレポート


≪『恋する寄生虫』スペシャルトーク付き試写会≫概要

【日程】 10月28日(木)

【場所】 神楽座

【登壇者】 井浦新、柿本ケンサク監督(敬称略) /MC:SYO


完成した映画を観ての感想を問われた井浦は「率直な感想は…ビックリしました」と語り「台本で描かれている世界観でも柿本監督らしさは全開だったんですが、(完成した)映像では軽くそれを超えてきて『え? こんなふうになってたの?』『この世界観の中でお芝居してたのか?』と現場では気づけなかったこと、想像以上のものを映像で監督が仕上げていったことに(映画を観ながら)どんどん気づいていきました」と驚きを口にする。

 

井浦が特に好きなシーンとして挙げたのが、序盤で高坂と佐薙(小松菜奈)が並木道を歩くシーン。井浦によると、並木はメタセコイアの木で、古代に生息し、一度は絶滅したと考えられていたが、中国の一部に現存しており、それを欧米の植物学者たちが苗木から増やして、世界中に広めたという。「生命として純度の高いメタセコイアとこの『恋する寄生虫』の世界の中で純度の高い2人の生命がひとつの画に入っているのを観たときの衝撃――このシーンがこの映画を表している! と感動しました。すごく意味のあるシーンだと勝手に思っていました」と興奮を柿本監督に伝えた。

 

また井浦は、本作の撮影部、照明部のスタッフ陣が、これまでに殆ど一緒に仕事をしたことがなかった面々だったことを明かし、技術スタッフの起用に関する監督の思いについて質問。柿本監督は撮影監督を務めたフランス人のKateb Habibとは、あるCMで一緒に仕事をしたことがきっかけで、本作でもタッグを組むことになったと説明。また照明に関しても長く信頼して仕事をしてきた森寺テツを起用しており「コロナ以前は年の半分くらいは海外での仕事で、世界中に行っていろんな国の照明スタッフ、カメラマンと仕事をしてたんですが『これは新しいな』というのが見つかったら、自分たちで“輸入”して改造して現場に取り入れていました。(井浦が)『なかなかない』と感じたのはそういうことです」と説明する。

 

井浦は「普段は(自分の演技を)モニターで見ないけど、今回は照明や撮影のアプローチが新鮮だったので『どう映っているんだろう?』と思っていました。仕上がりが全く想像つかないことってなかなかないです」とこれまでにない経験に強い刺激を受けたようだった。

 

観客からは、静かで淡々とつづられる原案とは対極とも言える、ポップで色鮮やかな雰囲気の映像に仕上げたことについての質問があったが、柿本監督は「“意外性”をプレゼンテーションしたいと思っていました。原案を読んでいて『こういうものだろう』と思って観る人に『こういう見方もあるんだ』『こういう世界もあるんだ』とひとつの物語でも多角的に見ていただけたら、これから先、いろんなものを見る中で『自分が見てきたものは暗いものだけじゃなかったんだ』と思っていただけたりするかもしれないと思いました」とその意図を説明する。

 

この“意外性”というポイントは、音楽に関しても大きな指針となったよう。劇中では13組のアーティストの楽曲が使用されているが、本作における“音”に対する思いについて質問されると、柿本監督は本作が「自分にとっては初めてと言えるくらいの挑戦だった」と語り「自分にとっても意外性はないか? と考えた時に3分に1回くらい、新しい予感が見えるようにできないか? と考えて、13組のアーティストに自由に暴れてもらう映画があってもいいんじゃないか? と思いました。世の中を見渡すと、そういう映画はたまにあるけど、日本ではなかなかないので、それを日本で成立させることは、チャレンジングで新しい世界を生むことができるんじゃないかと思ってやってみました」とふり返った。

 

井浦は、以前から主題歌「Parasite in Love」を手掛けるAwichのファンであったことを明かし「最初にエンディングを観たとき、こんなに映画と音楽がマッチするんだ?と思いました。エンドロールってすごく大事な時間ですけど、映像と共に『Parasite in Love』が効いているなと思いました。作品とすごく相性が良くて、曲が作品とひとつになっていた」と称賛を送る。

 

 

柿本監督は、Awichが活動するヒップホップというジャンル自体が「マイノリティがマジョリティに対し、どうやって自分の存在を訴えるか? ということがルーツにある」と説明し「彼女自身、いろんな葛藤があってここにいる。彼女には、『ギャップを感じるかもしれないけど、この映画の根底はヒップホップなんです』とプレゼンしました。そして、弱者に寄り添える曲ができたらと伝えました」と語り、井浦も「この感じ、すごく新鮮でした」と深くうなずいていた。

 

トークの最後に柿本監督は「奇しくもこういう時代になり、高坂という主人公がずっとマスクを着けて生活しているけど、撮影前は『本当にこんなキャラクターでいいのかな?』と思いながら撮影していました。撮影が去年の3月下旬に終わって、それから少しして緊急事態宣言が出て、世界が止まってしまい、世の中の価値観が一変していく中で完成した作品であり、自分でも運命じみたものを感じています。いま、『生きづらい』と思っている人に少しでも寄り添える作品になっていればと思います」と語りかける。

 

井浦は「柿本監督の真骨頂は、普段、僕らが目に見えないものを映像で形にして表現すること。この作品は監督が久々に撮られた長編映画で、『映画を作るぞ』という熱量を現場でも感じたし、作品からもものすごい熱量を感じました。PVのような長編映画では全然なくて、そうさせているのは、主演の林遣都くんと小松菜奈さんのすばらしさ。2人の存在がすごく大きいと思います。正直、2人を見ているだけで2時間くらいあっという間に過ぎていくし、この作品でこそ彼らの、目を惹きつけるお芝居を味わえると思います」と柿本監督、そして主演の2人を絶賛。最後に「みなさんの力でこの映画を広めていただけるとありがたいです」と呼びかけ、トークセッションは幕を閉じた。

©2021「恋する寄生虫」製作委員会